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海牛祭り2026|沖縄美ら海水族館でマナティー観察会&シンポジウム(2/8)No3

更新日:1 日前

2026年2月8日(日)、沖縄美ら海水族館で「第8回 海牛(かいぎゅう)祭り」を開催します!


当日はまず、水族館でマナティー観察会。マナティー

そのあとに、国内外の研究者が集まるシンポジウムが続きます。




今回、海牛類を飼育する水族館から、計3名のプロフェッショナルが集結します。

忙しいみなさんが同じ場にそろうのは、本当に貴重です。


  • 三谷 伸也 氏(鳥羽水族館、生物多様性保全推進室)

  • 真壁 正江 氏(沖縄美ら海水族館、海獣課マナティー係)

  • 櫻井 俊行 氏(新屋島水族館 館長)


さらに、イベントホストはおなじみのマナティー、ジュゴン研究者2名です。


  • 菊池夢美(マナティー研究所、ちきゅう研究所)

  • 市川 光太郎(マナティー研究所 / 京都大学フィールド科学教育研究センター)


沖縄に、マナティーとジュゴンの専門家たちがぎゅっと集まります!


このブログでは、講師の発表内容や活動をご紹介します。

気になるテーマから、ぜひのぞいてみてください。


今回は、以下の2名をご紹介します。



その他の発表紹介はこちら




<ジュゴンの鳴き声から生態を知る>


私の研究は、水圏生物音響学です。音を出す生物が「いつ、どこで、何を、どれくらい」を解き明かす研究をしています。調査地は沖縄、タイ、スーダン、マレーシア、オーストラリア、鳥羽水族館などです。


スーダンでのバイオロギング調査の様子
スーダンでのバイオロギング調査の様子

ジュゴンは個体数が減りつつあり、繊細で、そばに近寄ることができず、海での観察が難しい動物です。

そこで私は、バイオロギング(個体に小型の機器を付けて行動を記録する方法)と、受動的音響観察(海に録音機を設置して音を録る方法)を組み合わせて調べています。


具体的には、鳴き声を録音して親子や個体同士のコミュニケーションを調べたり、ごはんを食べるときの音(摂餌(せつじ)音)から「いつ、どのくらい海草を食べているか」などを調べています。


ジュゴンはマナティーと同様に草食性で、海草を食べています。海草をそしゃくするときにシャクシャクと音がなるため、それを「摂餌(せつじ)音」として記録します。


さらに、ジュゴンに装着した水中録音機では、泳ぐ時の「尾びれを振る音」が記録されるため、そうしたデータを解析し、休息や移動、遊泳といった行動パターンを読み解きます。


こうして得られた情報を重ね合わせ、ジュゴンがどの海域をいつ利用するのか、摂餌場や移動ルートの特徴は何か、といった生息海域の利用特性を解明し、保全に役立てたいと考えています。


ジュゴンが食事をする場所には、豊かな海草藻場がひろがっています。そこにはたくさんの魚や貝、甲殻類が暮らしているので、漁師さんにとっては良い漁場です。

ジュゴンと漁師さんが共に海草藻場を利用していくためには、ジュゴンへの配慮も必要です。


海草(リュウキュウスガモ)の様子(Photo from 菊池夢美)
海草(リュウキュウスガモ)の様子(Photo from 菊池夢美)

私は文化人類学も併用し、漁業の実態や地域の暮らしを理解したうえで、住民の方々が無理なく取り組める「ジュゴン保全」の仕組みを目指しています。


シンポジウムでは、音を使ったジュゴンの生態研究について紹介します。

謎だらけのジュゴンについて、音から彼らの暮らしをみてみましょう。




<海草藻場の消失危機におけるジュゴン保全>


今回初めて、コンキアット博士にイベントへご参加いただけることとなりました。

市川博士のご紹介で実現しています。


タイのアンダマン海に生息するジュゴンの個体群は、主な餌植物である海草藻場が急速に劣しているため、現在、存続の瀬戸際に直面しています。


こうした問題は、海水温の上昇や海面変動といった気候変動の影響に加え、沿岸域の開発(浚渫など)や土砂の流入(堆積)など、人間活動による圧力が重なって生じています。


これらの要因により、過去10年間で、ジュゴンの地域個体群は約50%減少しました。

座礁した個体の解剖では、慢性的な栄養不足や、胃の中が空である例が、しばしば確認されています。


また、生息地の喪失によってジュゴンは船の往来が多い沿岸域へ追いやられ、船舶との衝突による死亡リスクが大きく高まっています。


この個体群の保全が世界的に重要なのは、タイのジュゴンが、他地域では確認されていない独自の遺伝的ハプロタイプを持つ*ためです。もしこの個体群が絶滅すれば、進化の歴史の一部が失われてしまいます。


そこで、本プロジェクトでは、迅速な評価(Rapid Assessment)、救助(Rescue)、保護(Protection)、リハビリテーション(Rehabilitation)を柱とする、技術を活用した保全枠組みを構築しました。


中心となるのは、VTOL(垂直離着陸)型ドローンと、自動ドローンステーションの運用です。広い海域を対象に、24時間体制の監視と、高解像度のジュゴンの健康状態モニタリングを行います。


こうした空からのモニタリングに加えて、水中音響技術を用い、AIでジュゴンの鳴き声をリアルタイムに検出しています。


さらに、実験的な指向性水中スピーカーを組み合わせ、接近する船舶をジュゴンに知らせることで、死亡要因の約8%を占める船舶衝突の低減を目指しています。

これらの技術は、リアルタイムデータに基づき、速度規制や生息地保護の範囲を状況に応じて即時に調整する「ダイナミック海洋保護区(Dynamic MPA)」への移行を支える基盤にもなっています。


こうした取り組みを支えるのが、市民科学(Citizen Science)です。

漁業者など地域住民が持つ知識と、ボランティアのドローン操縦者による観察を組み合わせることで、データ不足を補いながら、地域主体の保全意識を育てていきます。


最先端のAI・音響技術と、草の根の参加を統合するこの包括的アプローチは、世界的に進む海草藻場の消失危機の下でも応用可能な、海洋哺乳類保全のモデルとなり得ると期待しています。


※タイ周辺の個体群には、DNA配列の“型”が特有のものとして存在するということ。

その型が、他の海域(例えば別の国や別地域の個体群)では確認されていない、という意味です。

その地域の個体群が、長い時間をかけて独自に残してきた遺伝的特徴の可能性があります。

もし、そのハプロタイプを持つ個体群が消えると、その遺伝的特徴は基本的に復元できません。だから「不可逆的(元に戻せない)な損失」という表現になります。




ジュゴンを“助ける”——保護・飼育の最前線


コンキアット博士の所属するプーケット海洋生物センターでは、ケガや衰弱などで保護されたジュゴンのケアや飼育にも取り組んできました。


たとえば2019年には、赤ちゃんジュゴンが保護され、センターでケアが行われました。

このようなタイで行われた赤ちゃんジュゴンの保護をテーマにして、マナティー研究所ではマンガ冊子を作成しました。教材として公開しています。



この「赤ちゃんジュゴンの保護」は、ただ助けるだけで終わりませんでした。

ジュゴンの存在が広く知られるきっかけになり、保全の輪がぐっと広がっていったのです。




市川先生曰く、タイは最もジュゴン保全が進んでいる国とのこと!

一緒に、タイの現場から「ジュゴンの未来」を考えてみませんか?



 
 
 

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