ピーターと一緒に生きものを守ろう─『マナティーがいた夏』感想と生物多様性保全
- 冨田明広
- 2025年9月22日
- 読了時間: 5分
今年も子どもたちにおすすめできる渾身の一冊を見つけることができました。
ほるぷ出版から今年の夏(2025年7月)に出版された『マナティーがいた夏』(エヴァン・グリフィス 作 多賀谷 正子 訳)です。
私が勤務している学校でも、何人かの子どもたちがこの本を読んで
「おもしろかった!」「感動した!」「マナティーに会いたい!」
と感想を伝えてくれました。
きっとこれを読んだみなさんも、主人公ピーターの勇気に魂が震えるような感動を覚えたことと思いますし、自分にとってのマナティーのような存在を、大切に大切に守っていきたいと思いを新たにするかもしれません。
生き物を愛するすべての人におすすめの本、『マナティーがいた夏』を紹介しようと思います。

『マナティーがいた夏』とは?(あらすじ紹介)
「ケガをしたマナティーの助け方を知りたいんです」ぼくはいった。
「名前はゾーイです。ていうか、ぼくがそうよんでいるだけなんですけど。ぼくの家の近くの運河にいて、ひどい切り傷を負ってるんです」
フロリダ州インディゴ川の近くで暮らす11歳の男の子「ピーター」。
彼は友達の科学大好きな男の子「トミー」と一緒に、「生き物発見ノート」を作ろうと、毎日川辺で生き物探しをしていました。
ある日、ふたりは初めて本物のマナティーを見つけます。
認知症であるピーターのおじいちゃんが、毎日のようにいきいきと話してくれる物語にいつも登場するマナティー。
そのマナティーが目の前に現れ、二人は胸が高鳴るのを抑えることができません。
二人は、マナティーの背中にあったジグザグの模様から、「ゾーイ」と名付けることにしました。

調べてみると、ゾーイの背中のジグザグの模様は、ボートに衝突されてできた傷であることが分かります。
中には50箇所以上傷のあるマナティーもいるそうです。
ピーターとトミーは、マナティーを守るため、インディゴ川ボートクラブの会長、レイリーさんに直接お願いしに行くことを決意します。
しかし、そんな中、恐ろしいことが起きてしまいました。
ピーターはゾーイが船着き場で動けなくなっているのを見つけました。なんと背中には、新たに深くてひどい傷を負っているではありませんか。
ピーターは吐き気をもよおすほど動揺しました。
きっと、ボートにぶつかったに違いない。早くゾーイを治療しなければ!
急いでトミーの家から、フロリダ・マナティー協会に電話をかけました。

この後のお話は、ぜひ実際に本を手に取って、ドキドキワクワク、楽しんでもらえたらと思います。
作品のテーマ ― マナティーを守ることの大切さ
少しだけ続きを教えるなら、ピーターは、おじいちゃんも大切にしていたマナティーを守るために、立ち上がります。
ピーターはスピーチの中で、こんな言葉で大人たちに訴えかけるのです。
「ぼくがいいたいのは、これはぼくたち全員にかかわることだ、ということです。みんなでマナティーを守ってあげないといけない。マナティーも僕たちと同じ生き物だから。」
そうですよね。たくさんのマナティーが傷ついて死んでしまう社会というのは、私たちにとっても、本当は良くない社会なのかもしれません。
たしかに、ボートが速く動くと便利に感じるかもしれませんし、それで助かる人もいるでしょう。
けれど、人間だけが気持ちよく生活できて、その裏で、誰にも気付かれずにマナティーが傷つき、死んでしまう。そして、子どものマナティーだけがたった一人、残されてしまう。
そんな社会は、結局は私たち人間にも悪い影響として返ってくると思うのです。
自分たちだけが良ければいい。そんな考え方がはびこるような社会は、きっと私たちにとっても暮らしにくい社会になるはずです。
ピーターはこのようにも訴えかけます。
「ぼくたちは、すべての生き物を守らないといけません。鳥も、魚も、トカゲも、全部。だけど、いっぺんにたくさんの生き物を守ろうとしても無理です。頭が爆発しそうになります。本当に。だから、ぼくたちはマナティーを守ることからはじめようと思います。みなさんもマナティーを守ることからはじめたらいいんじゃないでしょうか」

生き物を守る「推し」を見つけよう
私たちマナティー研究所も、マナティーを守ることを通して、生き物の多様性について考え、街の自然環境を見つめています。
ピーターや私たちにとって、マナティーは、環境を守る大切なシンボルとなりました。それは偶然にも、身近にマナティーがいたからです。
みなさんにとって、身近な自然を大切にしたいと思うシンボルとなる生き物はいませんか?
草花もいいですね。綺麗な景色も、その一つかもしれません。
その生き物を大切にする「推し」にしてみてはいかがでしょうか?
その「推し」は近くの雑木林にいるかもしれませんし、動物園にいるかもしれません。
その生き物をよく知ったり、大切にしたりすることを通して、生物多様性について考え、取り崩されていく自然環境について気を憂う。
そんな象徴としての「推し」の生き物を見つけられたら、新しい視点で生活を見つめ直せるようになると思うのです。
余談になりますが、今年の夏、家族とカブトムシを取りに雑木林に出かけました。見つけたカブトムシは、なんだか小さい。自分が子どもの頃よりも、カブトムシが小さくなっているように感じました。
『カブトムシ山に帰る』(山口 進 著 汐文社 2013年出版)によると、もともとカブトムシは小さかったのですが、人間が豊かな里山を大切に育ててきたことで、幼虫の餌となる腐葉土も栄養たっぷりになり、カブトムシが大きく育ったそうです。
ところが、最近では里山が荒れてしまい、土壌の栄養が少なくなってきて、またカブトムシが小さくなっているそうです。カブトムシの大きさにも、自然環境の変化が関係しているようです。
これからも、私の「推し」であるカブトムシを、観察していこうと思っています。

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沖縄美ら海水族館でのマナティー観察と、世界の研究者によるシンポジウムを通して、海牛類の魅力を存分に味わえるイベントです。
参加受付は2025年9月23日(火・祝)朝8時から!






