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菊池研究員レポート②(ペルー)

更新日:2018年7月7日

2017年11月 アマゾンマナティーの調査報告@ペルー


報告者:マナティー研究所/京都大学 野生動物研究センター 菊池夢美

イキトスで保護されている赤ちゃんマナティー

 2017年から,#ペルー の #イキトス にある「 #アマゾンレスキューセンター(通称;CREA,クレア)」との共同研究を開始しました.


 CREAのメンバーとの出会いは,3年前にコロンビアの #カルタヘナ という街で開催された南米動物学会です.そのときから,彼らとはFacebookで友達となっていたので,しばらく会う機会がありませんでしたが,お互いの近況を知っている,という関係でした.


 南米に研究活動の場を広げたいと考えていた私は,2017年に「イキトスへ行こう!」と思いつきました.イキトスは「アマゾン川の始まりの場所」と言われていて,文献によると,野生 #マナティー も多く生息しているようです.


 私はすぐにFacebookのメッセンジャーでCREAのメンバーに連絡を取りました.彼らは快く共同研究を承認してくれたので,2017年9月に初めてイキトスへ行って,具体的な相談を行いました.そして同年11月,アマゾンマナティーの放流に参加するために再びイキトスへ戻りました.

CREAの入り口

 CREAはイキトスの空港から近いこともあり,観光客に人気のスポットです.イメージキャラクターはもちろん,#アマゾンマナティー です.

 マナティーの他にも,希少な猿やカワウソ,美しい #コンゴウインコ など,たくさんの生物が #保護 されています.数年前には,あの #ハリソン・フォード 氏もここを訪れました.そのときの写真を見せてもらうと,映画と変わらぬ素敵な姿が.休暇として訪れたそうで,CREA訪問後は #アマゾン川 でクルージングを楽しまれたのだとか.


 そう,ペルーのアマゾン地域は欧米からの観光客に人気のスポットとなっていて,冷房完備,素晴らしい食事付きのアマゾン川ボートクルージングや,リゾートホテル,動物園が整備されています.


 特にイキトスは観光業に力を入れていることもあり,多くの観光客が訪れていて,街では英語が通じます.英語が一切通じないブラジルのアマゾン地域との違いに,私は驚いてしまいました.しかし,こうして観光に特化したせいか,イキトスではペット化される野生生物が大きな問題となっています.


 イキトスでは,マナティーの密漁の他に,リゾートホテルや観光施設でペットとして無理な飼育をされて衰弱したマナティーが多く保護されています.

 CREAに保護されたマナティーは,飼育水槽で健康状態を取り戻すまで過ごします.その後,アマゾン川沿いの湖へと放流されます.

 湖はCREAの近くにあり,ウォーターレタスという浮き草がたくさん生えていて,マナティーたちはこれを食べます.野生のアマゾンマナティーにとっても,ウォーターレタスは大切な餌植物です.


 マナティーたちは,アマゾン川の環境に近い「半野生環境」として,この湖で川に戻るまでのリハビリ期間を過ごします.


 そして,半野生の環境で健康なマナティーを選んで,アマゾン川へと放流しています.CREAは,アメリカの #ダラス国際水族館 と協力して保護活動や野生復帰事業を行なっています.


 ペルーのアマゾン川も,ブラジルと同様に水質はとても濁っているので,放流した後のマナティーの行動を観察することができません.そこで,私は,ブラジルのアマゾンマナティー調査と同じ #データロガー を使って,ペルーのアマゾンマナティーの放流後の行動を調べることにしました.

 データロガーとは,動物につけられる小さい記録装置です.行動や音など,様々な情報を動物たち自身に記録してきてもらうことができます.


 今回は,3頭のマナティーに #データロガー を装着しました.背中には吸盤で付けて,尾びれベルトへも付けました.


この尾びれベルトには,放流後のマナティーの居場所を調べるための発信機がついています.発信機からは信号が出ていて,それをアンテナで受信してマナティーの位置を調べます.


 さらに,この信号は,24時間以上動きがないときには間隔が早くなるように設定されているので,マナティーの生存確認やベルトの脱落の確認にも使われます.

 尾びれベルトにつけたデータロガーは,放流3日後に外れるように,自動切り離し装置を使いました.吸盤で背中につけたデータロガーは,2日ほどで自然に外れるのを待ちます.


 アマゾン川の水中にはたくさんの植物や #水没林 があるため,マナティーが遊いでいると吸盤がそれらに引っかかって外れます.

 データロガーは浮力体で作ったケースに入れてあり,マナティーから外れたら水面に浮くようにしています.水面に浮いたロガーの位置を調べて機器一式を回収するため,浮力体ケースには発信機も付けています.


 マナティーの放流後は毎日,発信機からの信号を受信して,マナティーの居場所を調べます.というのも,マナティーが遠くに泳いでいってしまうと,信号を受信できなくなってしまうからです.マナティーを見失わないように,毎日どこにいるのかを調べなくてはいけません.

 今回の調査では,無事に全ての機材を回収することができました.ロガーが浮き草に絡んでいるときは,見つけにくくて大変でしたが,仲間の協力でなんとか発見できました.


 ペルー・アマゾンに初めて滞在してみて,ブラジル・アマゾンとの違いをいろいろと体験しました.特に,ペルー・アマゾンは虫の量が多く感じました.私たちの過ごしていた小屋が森の近くだったからかもしれませんが,蚊やトカゲ,カエル,なんだかわからない甲虫類,そしてタランチュラがいっぱい.自由にしている野生タランチュラを見るのは,これが初めてです.


 蚊の量も,ブラジル・アマゾンでの調査とは比べものにならないほどでした.さすが,アマゾン川の始まりの場所.唇を刺されたときは,たらこ唇のように腫れてしまって,痛いやら痒いやら.


 次に,ペルー・アマゾンのコーヒーがとても薄いことに衝撃を受けました.ブラジルでは,毎朝,濃く煮出したコーヒーを準備して,好みでミルクや砂糖を入れて飲みます.コーヒー大好きな私にとっては,癒しの時間です.

 ペルー・アマゾンでは,漁師さんたちが漁業のときに使う小屋をお借りしていました.彼らはアロワナの稚魚の養殖も行なっていて,この時期は稚魚の世話のために交代で小屋に滞在しています.朝食は,近くの村に住む女性がコックさんとして準備してくれました.


 そこで飲んだコーヒーは,コーヒーのお湯割,と言いますか,ほとんど色の付いていない,コーヒー風味の白湯だったんです.そしてたっぷり砂糖が入っているので,とても甘い.


 最初は,これがなんだかわからず,アマゾン川の水を煮たものかな?と思って,ちょっと怖くてあまり飲まなかったんです.仲間に聞いてみて,これがコーヒーだとわかりました.イキトスの街では,普通の濃さのコーヒーだったので,もしかしたらアマゾン地域の特徴なのかもしれません.


 「アマゾン」とひとくくりにできない.数カ国をまたいで流れるアマゾン川は,各地でそれぞれ異なる文化を持ち,動植物の種類も違います.


 私はまだ,アマゾンのことをほんのちょっともわかっていない,と,改めて広大なアマゾンに魅力を感じ,離れられなくなりました.


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