2021年6月に実施したオンライン・サイエンスカフェの紹介です!
講師と参加者が共に考える時間をつくりたい、と始めたマナティー研究所のサイエンスカフェは、今年で3回目となりました。
今年は海の環境問題と生物多様性のテーマに分けて開催しました!
このブログでは、海の環境問題の回を紹介します。
4日間で、5名の講師による発表を行いました。
オンラインでの実施のため、事前に講師の発表動画をyoutubeで参加者向けに公開し、質問を募集しました。そして、イベント当日は質問へ回答していく、ラジオ形式で開催しました。
6/19 海の生きものの大切さ〜ラッコと海牛類から学ぶ〜
菊池夢美(マナティー研究所)
海の生きものを守ることが、なぜ海の環境を守ることにつながるのでしょうか?
わかりやすい例として、ラッコの乱獲、減少の結果、海の環境が変わってしまったことを紹介しました。
しかし、生きものがいなくなる=環境の変化、といった分かりやすい事例ばかりではありません。
たとえば、体の大きな海牛類、ステラーカイギュウは、乱獲で短期間で絶滅させられてしまいました。
では、彼らが海からいなくなって、海の中でどんな変化が起きたでしょうか?
実はよくわかっていません。
私たち人間は、生きものや環境について、まだよく理解できていません。
だからこそ、生きものが絶滅してしまって、取り返しのつかないことにならないように、生きものを守らなくてはいけません。
6/22 お金を払ってゴミ拾い?!新しい地球の遊び方 プロジェクトマナティ
金城ゆきの(株)マナティ)
海まで出かけて行ってごみ拾いをしよう!
でも、回収したごみをどうしよう?
勝手に付近のゴミ捨て場に捨てることはできません。
住民じゃない人がごみ捨て場を利用した場合、不法投棄となることもあります。
プロジェクトマナティは、ワンコインで気軽にごみ拾いができるシステムです。
ごみ拾いグッズを借りられて、集めたごみを回収してもらうこともできます。
また、ごみ拾いも大切な活動ですが、プロジェクトを通じて地域の人たちとコミュニケーションがとれるのも、魅力的なポイントです。
沖縄で始まったプロジェクトマナティは活動地域を広げつつあります。
気軽にごみ拾いができて、地域の人たちとの出会いがある、これは新しいアクティビティだと感じました。
6/26 瀬戸内海の沿岸環境の変化〜カブトガニは知っている?〜
渡辺伸一(有)リトルレオナルド / 株)バイオーム)、東川洸二郎(笠岡市立カブトガニ博物館)
カブトガニは2億年前からほぼ同じ姿をしているので、生きた化石と呼ばれています。
彼らの長い歴史からみれば、人間誕生からの歴史はあまりにも短いものですね!
しかし、カブトガニは今、絶滅の危機に瀕しています。
今回は瀬戸内海のカブトガニについて紹介していただきました。
瀬戸内海は日本最大の閉鎖系海域ですが、自然の沿岸環境が失われています。
そんな中で、カブトガニの大量死が相次ぎました。
一体、海の中で何が起きているのでしょう?
講師の渡辺博士たちは、カブトガニの生態を調べることで、海の変化を調べています。
その試みを紹介してくれました。
また、カブトガニのように、昔からいる身近な生きものがいなくなることの怖さを問いかけてくれました。
6/26 エシカル消費と、海と環境への取り組みについて
廣岡輝(Ethical&SEA)
エシカルという言葉の意味を知っていますか?
エシカルは、倫理的な、という意味です。
つまり「エシカルな商品」とは、地球環境に配慮して、人の健康にも配慮した商品、という意味だと考えられます。
Ethical & Seaブランドアドバイザーの廣岡氏にいろいろな質問へ答えてもらいました。
セレクト商品を選ぶ基準は?
環境配慮の商品を消費者に購入してもらうための工夫は?
ケミカルと比べて遜色ないオーガニック製品の提案はどのようにしていますか? …など
ケミカル商品と比べると、オーガニック商品は、例えば日焼け止めや化粧品は汗で落ちやすい、食器の汚れが落ちにくい、など、ちょっとした手間のかかることがあります。
ちょっと一手間かけても、自分が使って嬉しいものを選ぶ。
自分にあったオーガニック製品を、毎日の生活に取り入れていくことが大切だと感じました。
6/29 お魚を守りながら食べるために、私たちにできること
太田毅人(みなと山口合同新聞社)、真鍋明弘(水産資源研究センター)
お魚が減っていることを知っていますか?
日本の漁獲はピーク時の1/3にまで減っているとのことです。
お魚が減っている原因については、いろんな意見が聞かれます。
よく耳にするのは
地球温暖化
XX国の乱獲
特定の漁法による乱獲
産卵する親魚を乱獲している …など
こうした意見がテレビなどから大きな声で聞こえてきます。
しかし本当にこれらは正しいのでしょうか?
講師たちは、魚が減っているのは「単純な理由ではない」ということを紹介してくれました。
たとえば、国ごとの漁獲量を年ごとに比較してみると、どうやら特定の一国だけが獲りすぎているのではないようです。
また、漁法ごとに魚資源への影響を比較してみると、非難されている漁法以外も、魚の数への影響が大きいようです。
さらに、気候変動で魚の数が減っているのに、追い討ちをかけるように漁獲数も増えていることが紹介されました。
大きな声の意見にだけ耳を傾けていては、問題を解決できそうもありません…
では、私たちにできることはなんでしょうか?
講師たちからは「エコな魚を食べよう」という提案がありました。
人気の魚ばかりではなく、旬な魚を!
希少な魚よりも、豊漁な魚を!
資源が豊富な魚を!
そして、講師たちから参加者への呼びかけもありました。
一人一人が、海や魚と向き合う国にならなくてはいけないこと。
科学者だけでなく、誰もが海の科学の大切さを発信できる時代だからこそ、ぜひみなさんに関心を持って発信してほしいこと。
2021年もオンラインでのサイエンスカフェ実施となりましたが、たくさんのご質問やご意見をいただき、参加者の皆様といっしょに考える機会となりました。
来年も6月頃にサイエンスカフェの実施を予定しておりますので、ぜひ皆様ご参加ください。
2019年のサイエンスカフェはこちらでご紹介しています
イベント概要
イベント名:オンライン・サイエンスカフェ - 海の環境問題 -海と日本プロジェクト
日時とタイトル:
2021年6月19日(土)
10:00 - 11:00 海の生きものの大切さ〜ラッコと海牛類から学ぶ〜(菊池夢美,京大野生研 / マナティー研究所)
2021年6月22日(火)
20:00 - 21:00 お金を払ってゴミ拾い?!新しい地球の遊び方 プロジェクトマナティ(金城ゆきの,株)マナティ)
2021年6月26日(土)
10:00 - 11:00 瀬戸内海の沿岸環境の変化〜カブトガニは知っている?〜(渡辺伸一,有)リトルレオナルド / 株)バイオーム、東川洸二郎氏、笠岡市立カブトガニ博物館)
14:00 - 15:00 エシカル消費と、海と環境への取り組みについて(廣岡輝,Ethical&SEA ブランドアドバイザー)
2021年6月29日(火)
20:00 - 21:00 お魚を守りながら食べるために~私たちにできること~(太田毅人,株)みなと山口合同新聞社 / 真鍋明弘,水産資源研究センター)
参加人数:78名
参加方法:Zoom
対象:どなたでも(内容の難易度は高校生以上となっております)
本イベントは2021年度 日本財団 海と日本プロジェクトの支援を受けて実施しています.
また,当団体の環境教育事業について,地球環境基金助成および株式会社ミツバの支援を受けております.
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