サイエンスカフェ(さかな回)
- 菊池夢美
- 2019年7月16日
- 読了時間: 6分
更新日:2021年10月29日
2019年6月30日(日)サイエンスカフェ「まだわかっていないこと - 海の研究 -」
東京大学農学部にて開催しました.
第1回サイエンスカフェ・マナティーのブログはこちらから
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今回のサイエンスカフェのテーマは
サステナブルな魚の利用について
中央水産研究所の真鍋明弘さんに登壇していただきました.
さかな資源についてはショッキングな現状があります.
全世界の水産資源について,約30%が乱獲状態であると言われています.
Costelloら(2016)によれば,主要な水産資源の約68%が乱獲状態である,と報告されています.そして, 2050年には88%の水産資源が乱獲状態になる,と予想されました.
人間が育てる畜産業や農業と異なり,水産業は自然が育んだものを獲ります.
乱獲がつづけば,資源が枯渇するのは時間の問題です.
枯渇すれば,もちろん魚を取れなくなり,食べられなくなります.
今回のテーマはこちらです
テーマ1.魚を食べ続けるために必要な対策は?
テーマ2.持続可能な管理のためには「若い魚」「卵を持つ親魚どちらの漁獲の方が良いでしょうか?

「天然のお魚が獲れないなら,養殖のお魚を食べれば?」
マグロやうなぎの完全養殖がある!
とはいえ,養殖の魚を育てるためには,海から魚を取ってこないといけません.
そして養殖魚が食べるものは天然魚由来の飼料です.
養殖する魚によっては,成長までに大量の餌が必要な場合もあります.
例えば,マグロを1kg増やすためには餌が15kgも必要(増肉係数)
さらに,養殖魚の排泄物や残った餌によって海洋汚染も心配されています.
テーマ1 魚を食べ続けるために必要な対策は?
ポイント
① 現在の養殖のエサは魚が主流
② 養殖によっては天然魚の子供を獲って育てている
③過密飼育による海洋汚染
参加者の皆様にはグループディスカッションをしていただきました.
こちらでは,アイディアの一部をご紹介します.
アイディア|養殖の餌にとうもろこしやクラゲを利用など,餌を変えられないか
植物性栄養素をどのように取り入れるか,が今後の課題となっています.
これまでの研究で,ヨーロッパヘダイやナイルティアピアなど,一部の魚では植物性タンパク質で飼育できることがわかりました.
アイディア|魚の種類ごとに漁獲制限をつけたらどうか
日本では50の魚種や群れ(系群)で漁獲制限を設けているけど,日本ではもっと多様な魚種や群れが存在しています.
漁獲管理や制限がおいついていないそうです.
水産資源についてはわからないことだらけ
海の中にいる魚の量 ➡ 数学的に推定
私たちが食べる魚の一生 ➡ 調査から推測
なぜ大きく増減するのか ➡ 気候から推定
私たちが食べている魚のことについて,データに基づいて推測されているものは少ないんですね.

アイディア|養殖して成長した親の魚の一部を野生へ放流する
水棲哺乳類の一部では,飼育ののちに野生へ戻す,野生復帰が行われています.
真鍋さん曰く,「ウナギなどでは行われているが、その効果は未知数。海の魚などではこれまでに考えたことのないアイディア」とのことです!
アイディア|インフルエンサーが旬の魚を進めれば,みんなが食べるようになるのでは?
錦織圭さんのコメントのあとにノドグロの消費量が跳ね上がったこともあります.
インフルエンサーに旬の魚の宣伝してもらうのはいいアイディアです!
真鍋さん曰く「旬を知るのはとても重要なことなんです」
旬のお魚を食べるようにすることで,常に同じ魚を獲り続けず,魚を少しずつ頂くことができます.
漁獲圧の分散
私たちは無意識に「常に同じ魚を市場に求めている」ことはないでしょうか?
これからも魚を食べ続けるためには,私たち消費者の意識から変えていく必要があると感じました.
アイディア|未利用魚の流通をより発展させることが必要
実は地元では昔から食べられている未利用魚も多くて,おいしいものもあるんです.
ぜひとも,インフルエンサーに未利用魚を広めていってもらいたいですね!

さて,次のテーマはこちらです.
水産資源永遠のテーマともいえる
テーマ2.持続可能な管理のためには「若い魚」「卵を持つ親魚どちらの漁獲の方が良いでしょうか?
魚類はたくさん卵を産みますが,生き残るのはわずかです.
アイディア|クロマグロの習性や生態をもっと詳しく知ることで,産卵期にまとめて獲るのではない,それ以外の習性を利用して効率よく獲ることができるのではないだろうか?
クロマグロについては,まだわからないことが沢山あります.
その生態が明らかになってくれば,効率よく持続可能な漁業を展開できる可能性もあります!
クロマグロは太平洋に分布しますが、わかっている産卵場は日本近海だけです。
そして、若い子供のクロマグロが獲れるのも日本です。
今は子供のマグロ(メジ)と産卵前の親マグロがたくさん漁獲されており、どちらを獲るのが良い、悪いという一方を選ぼうとする感情的な議論があります。
産卵のために集まってきた親マグロを一網打尽にする
成長中の子マグロをコツコツ獲り続ける。
このどちらかではなく、適度にマグロを「持続可能な程度にいただく」という考えを持たないといけません。
そのためには習性や生態をキチンと把握して、今のマグロの量や、回遊ルートなどを理解することが大事になりますね.
クロマグロの産卵場は日本近海だけ。
彼らを守るには日本の努力がとても重要なことなんですね。
最後に,みなさんにお伝えしたい大切なメッセージを

これからも美味しいお魚を食べ続けるために私たちにできることは
・旬のお魚を食べるようにしましょう
・常に同じ魚を市場に求めないようにしましょう
参加者の皆さま,本当にありがとうございました!
講師として登壇してくださった真鍋さん,本当にありがとうございました!
また来年も6月頃にサイエンスカフェの開催を予定しています.
みなさまとまたお会いできるのを楽しみにしています!
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研究ってどんなことをするんだろう?
プロの科学者から海の生き物の研究を教わってみませんか?
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当団体には小学生の教育に詳しいメンバーがおり,低学年・高学年それぞれに適した学びが準備されています.
開催場所は地球環境パートナーシッププラザ(表参道駅より徒歩),または東京海洋大学品川キャンパス(品川駅より徒歩)です.
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皆様のご参加お待ちしています!
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