沖縄のジュゴンとは?生態・鳴き声・文化を学ぶサイエンスカフェ
- 菊池夢美
- 8月31日
- 読了時間: 4分
更新日:9月2日
2025年6月7日(土)、宮古島市の「島の高等学院」でサイエンスカフェ 「まだ誰も知らないジュゴンの話 ― 科学で探り、文化でたどる ―」 を開催しました。
「ジュゴンってどんな動物?」──沖縄に生きる大きな海の草食動物。
サイエンスカフェで学んだジュゴンの生態や鳴き声の研究、地域の歴史や文化との関わりをわかりやすくまとめました。

ジュゴンとはどんな動物?
ジュゴンの特徴と生態
ジュゴン(Dugong dugon)はマナティーと同じ海牛類に分類される海のほ乳類です。体長は3m以上、体重は300kgを超えることもあります。尾びれは三角形で、イルカのような形をしています。
ジュゴンは海草を食べる草食動物で、浅瀬の藻場をすみかとしています。母と子は鳴き声でコミュニケーションをとり、2年ほどかけて子どもを育てます。
ジュゴンとマナティーの違い
同じ海牛類でも、ジュゴンとマナティーは見た目や生態が異なります。
ジュゴンの尾びれはイルカに似た形で、口は下向きに伸び、海底の海草を食べるのに適応しています。一方、マナティーは淡水域にも生息し、尾びれは丸い形をしています。
詳しい解説は「ジェームズ先生のマナティー講座」をご参照ください。
沖縄のジュゴンの分布と現状
日本で唯一沖縄に生息するジュゴン
ジュゴンはインド洋から西太平洋にかけて約40カ国で生息が確認されています。日本では唯一沖縄にだけ生息しています。かつては沖縄本島から宮古島、多良間島、石垣島、西表島、波照間島などで目撃されました。
ジュゴンの目撃情報と数が減少した背景
「この宮古島で、おじいの若い頃には、すぐ近くにジュゴンがたくさんいた」という地域の証言が残っています。しかし現在はごくわずかな個体しか確認されていません。その背景には沿岸開発や環境変化が深く関わっています。

ジュゴンはなぜ絶滅危惧種なのか
漁網への混獲や船舶との衝突
日本では魚網への混獲が問題になりました。
また、世界各地では船舶との衝突も問題になっています。また、ジュゴンは法律によって保護されていますが、今でも食べるための密猟が続いているということです。
藻場の減少や海洋開発の影響
ジュゴンの主食である海草が生える藻場は、埋め立てや水質悪化によって減少しています。食べ物が失われることは、ジュゴンの生存に直接影響します。
IUCNレッドリストと保護状況
ジュゴンはIUCNレッドリストで「絶滅危急種(Vulnerable)」に指定され、日本では天然記念物として保護されています。
しかし、生態の多くが未解明であり、具体的な保全策を立てにくいという課題もあります。
サイエンスカフェで学んだこと
ジュゴンの鳴き声研究からわかること
市川光太郎博士(京都大学・マナティー研究所)からは、ジュゴンの生態とともに最新の鳴き声研究が紹介されました。世界各地のジュゴンの声を聴き比べ、鳴き声の役割や意味を学ぶことで、研究の面白さと課題を実感しました。
沖縄の文化とジュゴンの歴史的な関わり
吉浜崇浩氏(株式会社蟹蔵)からは、沖縄でのジュゴンの目撃情報や人との関わりが紹介されました。
琉球王国の時代にはジュゴンが税として納められたり、中国の使者をもてなす料理として利用された記録も残っています。
座談会で語られた「ジュゴンを守る意味」
進行役の菊池夢美博士(名城大学・マナティー研究所)のもと、参加者と研究者が意見を交わしました。
鳴き声から何がわかるのか?
マナティーとジュゴンの違いは?
沖縄で「ほとんど見られないジュゴン」をなぜ守るのか?
子どもから大人まで、活発に意見を交わす場となりました。

沖縄のジュゴンと生物多様性を未来へ
ジュゴンの暮らす海には、他にも多くの生物が共に生きています。ジュゴンが絶滅してしまったら、生態系にどんな変化が起きるのか予測できません。いなくなってから後悔しても取り返しはつかないのです。
いま「生物多様性を守ること」は世界の共通課題です。
沖縄の海に暮らす大きなジュゴンが、これからも私たちの「お隣さん」として共に生きていけるように、海や生きものを大切に上手に利用していくことが必要だと考えます。
HPで「生物多様性の大切さについて」紹介中です。
English Blog: https://www.manateelab.jp/post/science2025
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