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本質的な探究へと進む子どもたち

更新日:2019年4月18日


報告者:冨田明広


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さて、菊池博士から手紙をもらってどんどん興味が湧いている子どもたち。


しかし、マナティーや熱帯雨林について詳しく教えてくれた手紙の最後には、子どもたちへの不思議な問いかけが書かれていました。


この最後の文章が、子どもたちの学習に波紋を広げることになります。



みなさんは、アマゾンマナティーのくらすアマゾン熱帯雨林をはじめ、世界の熱帯雨林が減っていることを知っていますか?

そして、熱帯雨林が減っていることと、私たちの生活が実は関係していること、気づいているでしょうか? 熱帯雨林からとおくはなれた日本にくらすわたしたちも、気づかないうちに熱帯雨林を犠牲にしているのです。



子どもたちは、頭をかしげてしまいました。


クエスチョンマークが教室中に飛び交っています。


マナティーを守るために協力をしたいのに、私たちの生活がマナティーの住処である熱帯雨林を壊してしまっているとは、どのようなことでしょうか。


手紙はここで終わっていて、続きはありません。


子どもたちは熱帯雨林のこと、自分たちの生活と熱帯雨林のつながりについて、気になって気になって仕方がありません。


「これは自分たちで調べるしかない!!」


この後、子どもたちは、学校の図書室で、お家で、パソコンを使ってたくさんのことを調べ始めました。


あんなに魅力的な熱帯雨林が、どんどん減ってしまっているの?


私たちの生活が、熱帯雨林を壊しているかもしれないの?


私たちは知らず知らずのうちに、マナティーの生活を脅かす方に回っているのかもしれない?


その熱量は、子どもたちの周りにいるたくさんの大人をも巻き込んで行きます。


読者の皆さんは当然思い描いていることだと思いますが、菊池博士と私との間で、メールのやりとりを何度も行い、子どもたちの探究心に火がつくような投げかけや仕掛けはどのようなものが良いだろうかと、周到な準備をしています。


マナティーのことについてはよくわかっている菊池博士も、子どもの発達段階やすでに持っている知識、また、3年生のクラスの実態などは知るはずもありません。


もちろん、子どものことや学習についてはよくわかっている私も、熱帯雨林については素人です。


担任である私と菊池博士の専門をしっかり重ね合わせて、学習の展開は考えられています。


子どもを引きつける学習は、専門家と担任がしっかり連携してこそ、初めて子どもたちの探究心を奮い起こすものとなるのです。


子どもたちはわしわしと動いて、熱帯雨林が直面している問題について調べ始めました。


一度火がつくと、子どもたちの学びたいという気持ちはどんどんと広がっていき、それはクラス中に伝播していきます。


少し紹介してみましょう。



★お父さんは仕事でマレーシアに行くことがあるんだけど、そこにもブラジルと同じように熱帯雨林がたくさんあるんだって。


でも、マレーシアの熱帯雨林も人間が木を切ってしまって、どんどん少なくなってしまっているみたい。


(この子は、実際にこのあと冬休みを利用して、お父さんとマレーシアへ熱帯雨林を自分の目で確認しに旅立ちました。)



★図書室に行ったら、ボルネオ島の熱帯雨林が切られたり燃やされたりしているという絵本があったよ。


パームオイルを作るために、熱帯雨林の木が何本も切られてしまっているんだって。


『ゾウの森とポテトチップス』

写真・文:横塚 眞己人出版社:そうえん社発行日:2012年12月



★図工の時間にマナティーの人形を作ってみたよ。


図鑑で体の形をちゃんと調べて作ったんだ。


この作品を写真にとって菊池博士に送ってほしいです。



★お父さんの会社は家を作っている会社で、木をたくさん使って家を立てているから、その分、ちゃんと自然を守ったり木を植えたりする活動をしているんだって。


今度お父さんの会社が行っている自然を守る活動に一緒に行くことにしたんだ。


会社の本もお父さんが持ってきてくれたんだよ。



★1秒間でテニスコート20面分の熱帯雨林がなくなってしまっているんだって。


たった今も、この瞬間も、どんどん熱帯雨林はなくなってしまっているんだ。


もう、熱帯雨林の半分はなくなってしまったみたい。



★熱帯雨林を焼いて畑にしているんだって。


動物たちも燃えてしまうかもしれない。かわいそう。

どうして畑にしなければならないのだろう。



教師の立場からすると、子どもたちが自立的に学習し、夢中になって何かを探究している状態に引き上げてあげることが、最も大切な仕事です。


決して、子どもたちに何かを教え込んだり、何かができるようにさせることが、本質的な仕事ではありません。


学習に夢中になって取り組んで、自分の目的に向かって前に進んでいる感覚こそが、学校教育の中で子どもたちに伝えるべき最も大切な価値であると思っています。


開発教育や国際理解教育の中でも、教材が終われば学習が終わり、授業が終われば学ぶことが終わり、結局は教師が用意したものの中で、学べていればよしとする風潮もあります。


けれども、子どもたちが本質的な学習に没入すると、学校の時間や自分の時間など関係なく動き、教師の期待に沿って動くことよりも、自分の興味関心に突き動かされて学習は進んでいきます。


この段階で子どもたちは、本質的な学習へとステップアップして、自分の責任で学び始めたことになります。


ここに引き上げることこそ、教師の役割であるように思います。


さて、子どもたちは菊池博士の言う、「気づかないうちに熱帯雨林を犠牲にしている」の真意を突き止めることができるのでしょうか。


 

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